歯内治療が原因で菌血症となった単心室症患者の一症例
- 大森 一弘1, 2),
- 杜 徳尚2, 3),
- 井手口 英隆4),
- 岡本 憲太郎1),
- 佐光 秀文1),
- 児玉 加奈子4),
- 山本 直史4),
- 赤木 禎治2, 3),
- 笠原 真悟2, 5),
- 伊藤 浩2, 3),
- 高柴 正悟4)
- 岡山大学病院・歯科(歯周科部門)
- 岡山大学病院・成人先天性心疾患センター
- 岡山大学病院・循環器内科
- 岡山大学学術研究院医歯薬学域・歯周病態学分野
- 岡山大学病院・心臓血管外科
doi: 10.34376/jsachd.C-2022-0002 PDF
早期公開日:2022年9月13日
歯科治療は,観血的処置にはみえなくても菌血症を起こすリスクが高い.今回,感染性心内膜炎(IE)高リスクに分類されるフォンタン手術後の患者が歯科治療に起因すると考えられる感染症を起こし,緊急入院に至る症例を経験した.患者は20歳の男性.多脾症候群,右室型単心室に対して,両側両方向性グレン手術とフォンタン手術の手術歴がある.2021年6月,近医で下顎左側第二大臼歯(#37)の慢性根尖性歯周炎の診断のもと,予防的抗菌薬の投与なく歯内治療を開始した.2021年7月,治療中の#37部の自発痛,悪寒,戦慄,発熱を自覚し,当院循環器内科を緊急受診した.履歴から歯性感染が疑われたため,当院歯周科へ緊急紹介され,#37急性根尖性歯周炎と診断した.IE高リスク患者のため緊急入院となり,経験的抗菌療法を開始した.入院5日目,抗菌薬持続投与下で#37の歯内治療を再開,入院12日目に歯内治療を終了,入院13日目に退院した.今回の症例を教訓に,患者自身が歯科治療に先立ち予防的抗菌薬投与の必要性を簡便に提示できる患者カードを作成した.本カードが適切に運用され,歯科治療由来のIE発症リスクが軽減されることを期待する.
キーワード:単心室,フォンタン手術,感染性心内膜炎,歯科治療