フォンタン循環における洞調律維持を基本とする不整脈管理の重要性
- 梅井 正彦1),
- 相馬 桂1),
- 齊藤 暁人1),
- 小島 敏弥1),
- 常盤 洋之1),
- 後藤 耕策1),
- 小室 一成1),
- 八尾 厚史2)
- 東京大学医学部附属病院循環器内科
- 東京大学 保健・健康推進本部
doi:10.34376/jsachd.C-2021-0004 PDF
早期公開日:2022年3月25日
フォンタン循環患者は,術後慢性期に上室頻脈性不整脈の発症リスクが高く,心不全増悪や突然死を引き起こす可能性がある.
症例は,右室型単心室に対してextracardiac total cavo-pulmonary connection術後の29歳男性.持続性心房粗動に対しソタロール内服し,洞調律維持は難しいものの脈拍コントロールは良好であった.その後,低酸素血症・下腿浮腫の増悪を認めたため,心臓カテーテル検査施行し,静脈圧・肺動脈楔入圧の高値のほか,veno-venous shuntが多数確認された.心房粗動における心室拡張障害から,心房圧・肺静脈圧が上昇し,受動的な肺動脈圧上昇に加え,反応性肺血管抵抗値の上昇が誘起された結果,静脈圧の更なる上昇と心拍出量の低下から心不全の悪循環を生じていたと考えられた.本症例では心房粗動の洞調律化後に心房圧・肺静脈圧低下のみならず肺血管抵抗値も正常化していた.心房粗動の洞調律化前後で心拍数は著変なく,フォンタン循環維持には,心拍数のコントロールのみならず洞調律の維持も重要であるということを示す教育的な症例であると考えられた.
キーワード:
Fontan circulation, extracardiac total cavo-pulmonary connection, atrial flutter, diastolic heart failure, veno-venous shunt