冠動脈バイパスを併用した右室流出路再建を行ったShaher 4型完全大血管転位症の1例
- 野村 耕司1),
- 森田 英幹2),
- 狩野 実希3),
- 鵜垣 伸也1),
- 清水 寿和1),
- 星野 健司4)
- 埼玉県立小児医療センター 心臓血管外科
- さいたま赤十字病院 心臓血管外科
- さいたま赤十字病院 循環器内科
- 埼玉県立小児医療センター 循環器科
doi: 10.34376/jsachd.C-2023-0001 PDF
早期公開日:2023年5月10日
完全大血管転位症(Transposition of the Great Arteries: TGA)に対する動脈スイッチ手術(Arterial Switch Operation: ASO)後の右心系血行路狭窄は頻度の高い合併症であり,これまで様々な狭窄解除法が行われてきた.右室流出路,肺動脈弁・弁上,分岐部・末梢肺動脈など最終的に右室圧上昇を来す部位は多岐にわたり,バルーン,ステントなどのカテーテルインターベンションや,肺動脈パッチ拡大,右室流出路パッチ拡大などの手術が行われてきた.しかし右室流出路前方を主要冠動脈が旋回するTGAでは流出路拡大形成が困難な症例も存在する.
今回我々はShaher4型ASO後TGAに対して,右冠動脈に伏在静脈グラフトを用いた冠動脈バイパスを併施し右室流出路を23 mm ON-X人工弁を内包した26 mm J-graftを用いて拡大血行再建を行い,さらに中心肺動脈を16 mm人工血管で置換することで十分な右室圧減圧を達成し得た成人先天性心疾患症例を経験したので報告する.
キーワード:完全大血管転位症,動脈スイッチ手術,冠動脈バイパス,右室流出路再建