症例報告

くも膜下出血を合併し,緊急コイル塞栓術で救命し得たFontan術後患者の成人例

  • 上野 健太郎1)
  • 小川 結実2)
  • 下園 翼2)
  • 川村 順平1)
  • 岡本 康裕1)
  • 鹿児島大学病院小児科
  • 鹿児島県立大島病院小児科

doi: 10.34376/jsachd.C-2024-0003 PDF

早期公開日:2024年6月18日

 Fontan術後患者において,血栓塞栓・出血性合併症は死亡原因として重要である.わたしたちは,くも膜下出血を合併し,緊急コイル塞栓術で救命し得たFontan術後患者の成人例を経験した.症例は21歳男性.乳児期に右側相同,房室中隔欠損(左室低形成)と診断され,2歳時にEC-TCPC(18 mm)を施行された.抗血小板薬,ACE阻害薬,β遮断薬を内服中.20歳時の心臓カテーテル検査ではSaO2 95.3%,平均中心静脈圧10 mmHg, 肺血管抵抗値0.84 Wood単位,心係数4.0 L/min/m2,心臓MRI検査で右室駆出率59.0%,房室弁逆流軽度であった.21歳時に頭痛,嘔吐を主訴に救急外来を受診した.前交通動脈脳動脈瘤または前頭蓋底硬膜動静脈瘻破裂に伴うくも膜下出血と診断し,緊急コイル塞栓術,ガンマナイフを施行し後遺症なく退院した.Fontan術後患者は,遠隔期に出血性合併症が多く,特に出血を伴う脳血管障害は致死的となりうる.わたしたちはFontan術後遠隔期に脳の血栓塞栓症・出血性合併症が起こりうることを理解し,これらの合併症を念頭におきつつ早期発見,早期治療に努める必要がある.

キーワード:Fontan術後患者,脳動脈瘤,硬膜動静脈瘻,くも膜下出血