日本成人先天性心疾患学会理事長挨拶
理事長 石津 智子

このたび、2026年より2年間、日本成人先天性心疾患学会(JSACHD)の理事長を拝命いたしました。これまで本学会を力強く牽引してこられた初代理事長 丹羽公一郎先生、前理事長・赤木禎治先生をはじめ、理事・委員の先生方、そして全国各地で成人先天性心疾患診療に携わってこられた会員の皆さまに、心より敬意と感謝を申し上げます。
本学会は、会員数の着実な増加、全国すべての都道府県における診療拠点の整備、専門医制度の確立、教育活動や国際交流の発展など、多くの成果を積み重ねてきました。その一方で、1980~90年代に外科治療を受けた中等度から重度の先天性心疾患患者さんが壮年期を迎え、再介入、心不全、不整脈、肺高血圧、妊娠・出産、就労、さらには移行医療や長期フォローアップの継続といった課題が、これまで以上に現実的かつ切迫したものとなっています。医療の進歩とともに、私たちの果たすべき責任もまた、確実に広がっています。
こうした時代背景を踏まえ、今期、私たちは次の三つの目標を柱として学会活動を進めていきたいと考えています。
第一に、成人先天性心疾患診療の「当たり前」を全国で底上げすることです。 成人先天性心疾患の診療が、一部の専門医だけの特別な医療ではなく、かかりつけ医、一般内科医、救急医、看護師など多職種が日常診療の延長線上で自然に関われる体制を構築することが重要です。そのために、内科学会や救急医学会をはじめとする関連領域への働きかけを行い、分野横断的な連携をさらに深めていきます。専門施設と地域医療が有機的につながり、患者さんがどこに住んでいても安心して医療を受け続けられる環境づくりを目指します。
第二に、この専門性を研究面でさらに深め、それを力強く支援することです。 成人先天性心疾患には、いまだ十分なエビデンスが確立されていない領域が数多く残されています。既存のレジストリや多施設共同研究をさらに発展させ、臨床現場の疑問に基づく研究を推進するとともに、その成果を国際的に発信できる英語誌の開拓や学術交流を支援していきます。また、国内外の優れた診療施設を実際に訪問し、各専門領域の高度な診療を体験できるようなサポート体制を整えることで、研究と診療の双方を高いレベルで循環させていきたいと考えています。
第三に、新たにこの分野に挑戦する若手を支援していくことです。 本学会はこれまでも、多様な専門性や立場を持つ医療者の視点を取り込みながら発展してきました。その強みをさらに生かし、次世代を担う成人先天性心疾患診療に新たに挑戦したいと考える若手医療者を温かく迎え入れる、自由で開かれた学会を目指します。そのために、こうした挑戦者を支援するワーキンググループを設置し、教育・研究・交流の場を広げていきます。多様な視点が交わることで、この分野に新しい発想と活力が生まれることを期待しています。
本学会は、もともと小児期の診療に深く関わってこられた小児科医、外科医の先生方が中心となり、成人期へと続く先天性心疾患診療を見据えて、循環器内科を巻き込みながら教育と診療体制を築くために発足しました。長年にわたり積み上げられてきた高度で専門的な発達心臓病学は、本学会の揺るぎない基盤であり、私はその歴史と努力に深い敬意を抱いています。
今回、初めて循環器内科医が理事長を務めることになりますが、小児科、外科の先生方が築いてこられた知と経験を大切に受け継ぎながら、謙虚に、そして確実に学会運営を進めていきたいと考えています。また、すでに各専門領域において最先端の医学を極めてこられた医療者が、先天性心疾患という領域に新たに参入する際には、立場や専門の違いを越えて、十分に言葉を尽くし、相互に理解し合う姿勢が何より重要であると私は考えています。
異なる専門性が交わるからこそ生まれる学びと発展を大切にしながら、本学会がこれからも対話に基づく、信頼ある学術の場であり続けられるよう、皆さまとともに歩んでまいります。今後とも変わらぬご指導とご支援を賜りますよう、心よりお願い申し上げます。
