左室–肺動脈導管再建術後に三尖弁閉鎖不全が増悪した修正大血管転位の一成人例
- 島袋 篤哉1),
- 北野 正尚1),
- 佐藤 誠一1),
- 西岡 雅彦2)
- 沖縄県立南部医療センター・こども医療センター 小児循環器内科
- 沖縄県立南部医療センター・こども医療センター 小児心臓血管外科
doi: 10.34376/jsachd.C-2025-0003 PDF
早期公開日:2025年10月21日
成人期の先天性修正大血管転位(ccTGA)において,体心室である解剖学的右室(aRV)機能と三尖弁閉鎖不全(TR)が予後を左右する重要な因子である.左室流出路狭窄の解除後にaRV機能不全とTR増悪をきたした成人例を経験した.症例は53歳女性で,診断は内臓逆位,ccTGA, 心室中隔欠損,肺動脈弁下狭窄,心房中隔欠損.17歳時に左室–肺動脈心外導管を用いた機能的修復術が施行された.52歳時に歯科治療を契機に感染性心内膜炎に罹患した.抗菌薬治療で感染がコントロールされた後,心外導管置換術を施行した.感染は治癒したが,術後にaRV機能不全とTR増悪をきたし,著明な肺うっ血を認めた.その病態は,左室流出路狭窄解除後に,左室/右室圧比が低下した結果,aRVが球状変化し,TRが増悪し,さらにaRV機能不全を惹起したと考えられる.ccTGAの左室–肺動脈心外導管を用いた機能的修復術の際には,特に心室間相互関係が変化することで術後にaRV機能不全とTR増悪をきたすことが危惧される症例には,肺動脈絞扼術などの左室/右室圧比を低下させない術式の追加を十分に検討し,必要に応じて実践することが肝要である.
キーワード: 先天性修正大血管転位,機能的修復術,左室流出路狭窄,三尖弁閉鎖不全,心室間相互関係
