肺高血圧による肝不全を合併したMustard術後の完全大血管転位の成人例
- 上田 寛修1),
- 高橋 信1),
- 佐々木 航人1),
- 小泉 淳一2),
- 森野 禎浩1)
- 岩手医科大学附属病院 循環器内科
- 岩手医科大学附属病院 心臓血管外科
doi: 10.34376/jsachd.C-2021-0001 PDF
早期公開日:2022年3月25日
完全大血管転位症に対するMustard心内修復術後の肺高血圧が遷延した成人例を経験した.症例:38歳男性.生後に完全大血管転位,心室中隔欠損と診断され,その後Blalock-Hanlon手術と肺動脈絞扼術,6歳でMustard手術と心室中隔欠損閉鎖術が施行された.転居後の38歳で当院を受診時には,下肢の浮腫と重度の低酸素血症を認めていた.心エコーおよびCTで肺高血圧と肺動静脈瘻,Mustardルートの狭窄を認め,Child-Pugh分類grade Bの肝障害の状態であった.心カテ所見は,combined post- and pre-capillary PHであった.その後,解剖学的左室機能低下と肺動静脈瘻,うっ血性肝硬変の増悪を認め多臓器不全となり死亡した.まとめ:Mustard手術後の完全大血管転位症例は,体心室である解剖学的右室機能低下に加えてpre-capillary PHやMustardルート狭窄の合併があると予後不良である.PH治療は早期の介入が必要であり成人期への継続的な管理が重要である.
キーワード:
完全大血管転位症,マスタード手術,肺動脈性肺高血圧症,うっ血性肝障害,両心機能不全