成育医療を考える:患者からみた医療や支援体制に対する期待とその現状

財団法人日本二分脊椎・水頭症研究振興財団 事務局長 九十九そのえ

 私ども,財団法人日本二分脊椎・水頭症研究振興財団は,二分脊椎(にぶんせきつい)や水頭症(すいとうしょう)という中枢神経系の病気をもって生まれてきた子どもたちや,脳腫瘍,脳卒中,頭部外傷,感染などの原因で水頭症を合併しておられる患者さんのために,5 年余の準備期間を経て,1993年に厚生労働省所管の公益法人として設立されました.
 私どもは,かかる病気の診断や治療法,予防法の開発を進める研究を対象とした助成を行ったり,医療従事者が開催する学術集会の後援を行うことによって医学の発展に貢献することを事業の主たる目的にしています.一方,患者さんおよびご家族に対しては,療養やリハビリテーションの指導を行う研修会を開催したり,医療情報の提供,また,社会一般には啓発活動を行うことで国民の医療向上に寄与することを担っています.設立以来今日に至るまで,研究活動の支援や社会福祉事業を継続することができ,それらが次第に認知されることによって財団は当該疾患の患者さん方の医療相談窓口としての機能も果たすようになってきました.
 この度,本公開シンポジウムのテーマになっています「成育医療」は,私どもに寄せられた患者さんからの相談に深く関係するものであります.即ち,二分脊椎や水頭症など慢性疾患を病む子どもたちが成長し,従来の‘小児医療’を終える時,続いてどこで適切な医療を受ければよいのかという大きな問題に直面します.最近の医療の傾向として,「患者の視点にたった医療」が盛んに謳われるようになりましたが,小児の疾患を抱えたままで成長された成人が増加している昨今,‘小児医療’から‘成育医療’という総合的な診療が強く望まれています.
 以上の立場から,私ども財団が,患者さんからの相談やアンケート調査によって知り得たご本人やご家族の悩みや疑問,社会自立の現状,医療を受ける側の医療に対する希望や不満,主治医に対する不満や期待,行政への要望などを具体的に提示いたします.
 
<二分脊椎とは>
 人の身体は,脳と脳からの命令を伝える神経組織によって動いています.そのメインの神経の束を脊髄といい,脊柱(脊椎骨)の中に収まっています.二分脊椎は,その脊椎骨が先天的に形成不全となり,本来ならば脊椎の管の中にあるべき脊髄が脊椎の外に出て,癒着や損傷しているために起こるさまざまな神経性障害の状態をいいます.症状としては,発症部位から下の運動機能の麻痺,排泄障害,その他内臓の機能に影響を及ぼします.二分脊椎の約 8 割に水頭症が合併しています.
<水頭症とは>
 髄液の産生,循環,吸収などの異常により,「脳室が異常に大きくなった状態」を指します.先天性のものから,後天性(頭部外傷やくも膜下出血など)のものまで発症原因はさまざまです.これらの障害のために脳内に過剰に髄液が貯留して水頭症は発症します.治療が遅れた場合,知的障害を来したり,死に至ることもあります.

 

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