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国立成育医療センター外科 佐伯守洋
成育医療は,病気の治療を年齢の枠を越えて行う医療であり,治療が胎児期にも始まるものがあります.そして,小児期,思春期を経て成人に至り,やがて次代のこどもをつくるまで一貫した治療が継続されます.胎児期には,胎児に発病した病気に対して治療を行わないまま妊娠を継続すると,胎児が死亡したり,赤ちゃんの心臓や肺,腎臓,中枢神経系その他の臓器に重い障害を残すことが明らかな場合に治療の対象となります.
新生児期や小児期には先天性あるいは後天性のさまざまな病気に外科的治療が行われますが,これらの病気の中には小児期に治りきらずに思春期や成人になってもなお経過観察や治療が必要となるものもあります.ここでは思春期以降にも治療が必要な小児期からの病気を持つ患者さんを仮にキャリーオーバー(carry
over)患児(あるいはキャリーオーバー成人)と呼ぶことにします.
旧国立小児病院における調査では1986〜1990年の 5 年間では外科の入院患者さんの中で16歳以上のキャリーオーバー患児が占める割合は2.6%であったのに対して1996〜2000年の
5 年間では5.2%と倍増しています.入院の目的は,定期的なあるいは病状が悪化したための検査,保存的(手術をしない)治療ならびに外科治療ですが,両年代とも保存的治療が最も多くを占めています.このように,治療を要するキャリーオーバー成人は年を経るにしたがってますます増加すると思われています.
こども達は高校生になるころから社会的活動が特に盛んになりますが,キャリーオーバー患児達もそれに適応しようとし,そのために病状が悪化することも少なくありません.また,それまでとは違った悩みも加わり,相談相手を探しているように感じられることもあります.大学生は時間が比較的自由になるので,あまり問題はないようですが,就職をする段階になると病状によっては必ずしも希望通りに行かないこともあり,社会的な深い理解が求められます.
先に述べましたように,こどもの多くの病気は小児期に治りますが,中には一生にわたる観察や治療が必要な場合もあることを患者さん,医療者ともによく理解し,その時々に適切に対処してこども達に可能な限りの良い人生を送っていただくことが我々に課せられた使命と考えます.
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