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アイゼンメンゲル症候群(肺高血圧)と妊娠

ご質問

31歳 女性

私はアイゼンメンゲル症候群です。
どうしても出産したいのです。酸素飽和値は98%になります。私の出産に協力して頂けないでしょうか?



お答え

酸素飽和度が、98%とすると、チアノーゼは認めない状況ですが、今回は、患者さんの情報が非常に少ないので、アイゼンメンゲル症候群と明らかな診断を受けた場合の妊娠出産に関して一般的にいわれていることを、書いてみます。程度により違いはあります。

肺血流量増加を伴う先天性心疾患で、肺血管抵抗上昇が進行し、肺動脈末梢に非可逆的組織変化を起こした状態をアイゼンメンゲル症候群と呼び、体肺交通路経由の右左シャントを認めます。
小児期は、症状に乏しいのですが、成人期は、明らかなチアノーゼを認めることが多く、2次的に赤血球増多(酸素を運搬するための赤血球数増加)により全身多臓器に合併症を認めます。歩行時には多呼吸、息切れを認めます。また、不整脈、心不全を認める場合もあります。
今までの、妊娠出産の報告では、母体死亡率30-70%、胎児死亡率50%前後と非常に高リスクです。妊娠中は末梢動脈血管抵抗が下がるため、チアノーゼは増強し、出血傾向を認めますが、広範な肺血栓を生じることもあります。肺血管抵抗が固定し、出産時の急激な循環動態変化に対し適応が困難なため、出産時には、血圧低下、酸素飽和度低下を生じ、失神することもあります。母体死亡は、主に出産後数日以内から1ヶ月以内に起こることが多いとされています。死亡原因は、肺動脈血栓、チアノーゼの急激な増悪、突然死です。帝王切開と自然分娩との優劣は不明です。流産、未熟児産、死産の頻度が高く、チアノーゼの程度と関係します。今回のご質問の場合は、チアノーゼが、殆どないので、胎児に対する影響は少ないと考えられます。母児ともにリスクがきわめて高い場合が多く、一般的には、避妊が強く勧められます。妊娠後は、早期の人工妊娠中絶がすすめられます。妊娠を継続し、出産後に母親が死亡した場合、赤ちゃんは、家族が育てる必要があります。死亡しないまでも、母親の日常の生活程度、生命予後を考えた場合、家族の十分な協力が不可欠です。
 妊娠出産は、本人、夫、家族の考え方が大切です。アイゼンメンゲル症候群で、妊娠出産が無事にすんだ場合もあります。しかし、妊娠後、継続して、出産を希望する場合は、十分な管理が必要になります。受け持ちの医師とよく相談することが必要です。産科、循環器科、麻酔科、新生児科、看護師などの密接な協力が必要です。赤ちゃんは低出生体重児が多いので、新生児科管理となることがあります。
文責:丹羽 公一郎