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ファロ-四徴症術後遠隔期の突然死に関してのご質問

ご質問

私は昭和30生まれのファロー四徴症なのですが、7歳のときにブレロック手術、26歳で根治手術を受け 術後比較的良好な状態で現在に至っております。 ここ15年くらいはJ大で半年か一年に一度検診 を受けているだけの生活です。 日常、特に病気のために生活をセーブするということもほと んどありません。 すでに根治手術後20年が経とうとしています。

ところで、こちらの管理指針のページを拝見しましたところ 「ファロ-四徴症術後遠隔期の突然死と予防」という項目が ありました。 病気の事は普段おおらかに考えているのですが、「遠隔期」 といえば私のような場合が当てはまるのではないかと思い、 すこし不安になりました。 術後比較的良好な状態でもやはり突然死などの症例がある のでしょうか? 45歳という年齢を考えますとそろそろ動脈硬化などが出てくる 時期に入ります。心臓に与える影響も心配です。 突然死を予防する上でどのような管理が必要でしょうか? これについてもう少し詳しい情報をお知らせいただければ幸 いです。 お忙しいところ大変恐縮ですが、よろしくお願いいたします。



お答え

心臓が原因としてなくなる場合大きく分けて、心不全にが進行し亡くなる場合 と、主に不整脈が原因で突然亡くなる場合の二通りがあります。前者は心臓のポ ンプとしての機能が悪くなり段々あるいは急速に心不全症状が進むものです。ま た心不全が進行しているときに致死性の不整脈合併により突然亡くなる場合もあ ります。

ファロ-四徴症の遠隔期死亡は、概ね5%以下としている報告が多いようです。 その、内訳は心不全死亡、突然死、不整脈死、心臓以外の原因などに分けられま す。心不全死亡は、肺動脈弁の逆流が高度の人、手術後も残ってしまった、肺動 脈狭窄の高度の人、心室中隔欠損が十分に治せていない人などに分かれます。

突然死というのはその名のとおり、急に亡くなるものですが心臓が原因の場合は 多くは不整脈によるもので、心臓の手術後に少数ながらみられています。ファロ -四徴症の場合は手術前の右心室の圧が術前高くまた 低酸素状態があること、 手術の際に右心室内外を切開すること、術後も 肺動脈弁の機能が悪い事があり 右心室の負担が残る事があることから、 手術後の不整脈が問題になることがあり、手術後遠隔期の突然死の報告 は多施 設から出され0.5%から6%と言われています。そしてどういった方がその危険が 高いのかが研究され診療に還元されているところです。

どのような不整脈が突然死の原因になるかと言いますと以下のようなものがあげ られます。

1)完全房室ブロック

心臓はもともと洞結節という自然のペ-スメ-カ-を持っており、洞結節から電 気刺激を発生させ左右の心房に電気が伝わり、その電気刺激により心房が収縮し ます。電気の一部は房室結節という心房と心室をつなぐ橋を通って心室に伝わ り、心室内で電気が伝播し心室が電気刺激され収縮します。心室の場合同時に収 縮がはじまらないと効率が悪いので心 室内に入った電気は3本の超高速な電線を介して心臓内に伝播してゆきます。

心臓手術後に房室結節の働きが悪くなり完全に電気が心室に伝わらなくなると、 心室自身が自主的に動きますが、その心拍数は遅いために心不全をきたしやす く、また心室細動(心室がショ-トしたようにいたるところで電気刺激が旋回し 痙攣しているような状態で収縮力はなくなり血圧も低下、意識は数秒で無くなり 死亡にいたることが非常に高い状態)を起こし突然死の危険が非常に高くなるた めペ-スメ-カ-は絶対に必要となり、非常に効果的な治療となります。

また完 全房室ブロックに移行しやすいものとしては房室結節の伝導が低下しかつ心室内 の3本の電線のうち2本の電線の伝導がない方で、心電図以外の検査を施行し注意 深く経過をみて完全ブロックに移行する場合はペ-スメ-カ-を植え込む必要が あります。

2)上室性不整脈

上室性の不整脈には様々な種類がありますが、突然死の原因になるものとしては 心房細動や心房粗動で、これらは心房が1分間に300-500回位で 動いている状態 です。多くの場合は房室結節はそのすべてを心室に伝える事は出来ないため、心 室は正常心拍数か100-200回位の頻拍を起こすか で、脈の乱れ・頻脈の症状をき たします。ところが運動や興奮したときに房室結節の伝導が良くなり心室が1分 間に200-300回の電気刺激を受けると先に述べたような心室細動にいたることが あるため、不整脈自体の治療として抗不整脈薬やカテ-テルアブレ-ション(原 因となる心臓の心筋組織をカテ-テルの先から電気を流し焼灼する事で原因をな くす治 療)と房室結節の伝導を抑制する薬が使われます。

3)心室性不整脈

ファロ-四徴症では一番問題になる不整脈で、右心室の血圧が術前高かったり、 術後も右心室の血圧が高かったり肺動脈の逆流により右心室の拡大があることが あり、右心室の心筋自体が痛んでいることと、右心室を切開したりする必要があ りその手術瘢痕が不整脈の起源になることがその原因とされています。

突然死に いたるのは心室頻拍(心室の一部が 起源となり心室が1分間に110回以上のの早 い脈となること)と心室細動(前述)があります。何回か心室頻拍を起こしその 後に心室頻拍から心室細動に移行し突然死するもの、最初から心室細動になり突 然死するも の、蘇生を受けて助かったニアミスといわれるものといろいろなケ -ス があります。

心室細動の場合はニアミスで助かった症例の場合は治療の絶対適応になります。 現在は薬だけでなく植え込み型の除細動器(ペ-スメ-カ-より少し大きいもの で、発作を自動的に感知し体内で電気ショックをかけてくれる機械)や可能であ ればカテ-テルアブレ-ションも選択されます。 心室頻拍は持続型(30秒以上)の場合は頻脈の症状も出現し、また持続すると心 臓への負担も重なりと突然死の原因にもなりますから治療の対象になります。頻 拍が非常に早く(200回以上)血圧の低下により意識消 失を伴う場合は危険なの で心室細動と同様に治療が必要となります。治療法はやはり薬やアブレ-ショ ン、植え込み型除細動器があり、安全性を考慮して選択されます。

非持続型の心室頻拍(3拍以上30秒以内)や心室性期外収縮(単発あるいは2連発 の不整脈)と突然死の関係はいろいろな報告がありますが、突然死の症例数が少 ないため一定の見解はまだありません。 以上の不整脈のうち単独で突然死にいたるの重症の不整脈は完全房室ブロック、 心室細動、早い心拍の心室頻拍です。その他の比較的重傷度の 低い不整脈の場 合でも突然死にいたる場合もありますが、その場合は心臓の筋肉の痛み具合の程 度によると考えられています。

特に右心室の障害が強いと予想される病態等と、 突然死の関係はいろいろと調査され現在明らかになりつつあります。手術時年齢 が高い方、手術後の右心室の血圧が高い方、肺動脈弁逆流が多く右心室が拡大し ている方、右心室を切開して肺動脈とつなげたパッチを使用した方、心電図で心 室の波が幅広くなっている方の場合はそうでない方に比べて統計的に突然死の危 険が高いと考えられています(統計的なデ-タなのでこれに当てはまる人が必ず 突然死する訳ではありません)。以上の場合はそれほど重症でない不整脈が出現 した場合でも心室筋が痛んでいるため重度の心室細動に移行するか、初めて起こる不整脈が重症のもので突然死に至る可能性があります。言い換えれば、不整脈 が認められるということだけで突然死をすることは、稀で、多くの場合は、右心 室に術後も負担がかかった状態が続き、心室筋が痛んでいる状態に、不整脈が合 併すると最悪のことが起こりうると言うことだと思います。

現状に於いて現在までに判明している調査結果から、突然死の危険の高い方に対 しては詳しい検査を施行し、必要であれば再手術により心臓の負担を軽くした り、不整脈の原因を排除あるいは発生をを予防する事、そして植え込み型の除細 動器により突然死そのものを予防することが治療の柱となっております。 疾患、病状によりますが、ファロー四徴症では、術後遠隔期も、継続して定期的 な専門医の受診が必要です。この病気が手術で治せるようになって、45年が経過 しており、術後遠隔期に起こる問題点が徐々に分かるようになってきています。 また、心臓の状態、機能などについての検査法も進歩していますので、定期的に かかることによってこれらの情報をえられますし、問題点に関する早期の対応が 可能です。<
文責:立野 滋