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アイゼンメンゲル症候群について

ご質問

38歳 男性

先天性心室中隔欠損アイゼンメンゲル症候群についてお伺いします。肺高血圧は、成長とともに自然に緩和される可能性はあるのでしょうか?また、そのような症例が実際にあるのでしょうか?
私は、先天性心室中隔欠損アイゼンメンゲル症候群と診断され、4歳と10歳の2回、心カテを行い、手術禁忌と診断され、現在に至ります。歩く、階段を上る程度で息切れ、動機はありますが、特に苦もなく、ほぼ一般健常者と同様の生活をしており、サラリーマンとして仕事にも就いております。20代半ばから30代半ばまでは、病院に行くこともせずにいました。ただ、30代半ばを過ぎて、体力的にしんどくなってきたこともあって、2年程前から近所の循環器の個人医院をかかりつけとし、経過観察をしてもらっていました。昨年夏頃に、会社の健康診断で肺の影を指摘され、総合病院で精密検査をした結果、(おそらくアイゼンメンゲルによる肺高血圧に起因するであろう)肺の血管拡張が原因でした。また、ごく稀ですが(特に寒い時期などに)、喀血もみられるようになり、最近では、仕事も残業を少なくする等の配慮をしています。
ところが先日、かかりつけの先生からは「アイゼンメンゲルの特徴的な所見が見られないので、アイゼンメンゲルかどうか疑問だ」と言われ、心カテを含め、総合病院での精密検査を進められました。その所見とは(私の記憶違いでなければですが)、心エコーにおいて、肺動脈の拡張がまったくない、右室壁の肥大化もない、左室が圧迫されひしゃげる様子もない、ということです。大昔ではありますが、過去2回の心カテでは肺高血圧の所見が観察されていますし、肺の血管拡張や喀血もあるので、私自身としては肺高血圧が緩和された、とはとても思えません。先生にも「肺高血圧が自然に改善していく症例等はあるのですか?」と質問しましたが、首をかしげるだけで、今ひとつ説得力に欠ける説明でした。このような状況で、総合病院を紹介されたものの、心カテを含む精密検査をすべきか悩んでいる、という状況です。仕事が多忙なこともあり、総合病院での検査に際しては、何日も会社を休まなければならず、単にアイゼンメンゲルかどうかを確認するためだけの不毛な心カテや精密検査ならば受けたくない、というのが本音です。決して心カテや精密検此が嫌だというのではなく、自分を納得させられるだけの説明と、かつ病気を改善していく見込みがあることに対して行うのだという確証があれば、進んで受けます。
参考までに、私の心室中隔欠損は15mm程度の大欠損で心雑音もなく、10歳時の心カテでは、体血圧を10とすると肺血圧が10~12、手術可否の判断基準は肺血圧が7~8以下ということで、典型的な肺高血圧で手術ができない、とのことでした。完治のためには、心肺同時移植しかないと言われました(10歳の心カテを担当し、20代半ばまで診てもらった主治医から聞いた話です。ただし、10年以上前の説明なので、記憶違いがあるかもしれませんのでご了承下さい)。外見的にはチアノーゼと、典型的なバチ状指が見られる程度です。外見があまりに健常者と変わらないので、どの病院でも「先天性心室中隔欠損アイゼンメンゲル症候群」であることを告げると「本当か?」と言われます...。



お答え

まず、肺高血圧とアイゼンメンゲル症候群の違いです。心室中隔欠損で、欠損孔が大きい場合、新生児から乳児期になると、欠損孔経由で、左室から右室へ大量の血液が流れ込みます。この血液は、肺動脈に流れて、心不全を伴います。生体反応のひとつとして、最初は肺動脈が収縮して、肺にながれる血液量を制限します。この状態が肺高血圧といわれます。この状態が続くと、肺動脈の末梢血管の血管壁が厚くなり、末梢肺動脈径が小さくなります。中心に近い肺動脈は、太いままです。この状態では、肺に流れる血液量は減少してきますが、肺高血圧は続きます。これを肺の血管抵抗が高い、或いは専門的ですが、肺動脈閉塞性変化と呼びます。この変化の初期であれば、手術で欠損孔を閉鎖すると、肺高血圧は、軽減し、正常となることが多いものです。肺の血管抵抗は時間とともに高くなります。肺動脈閉塞性変化が進行しますと、手術的に治しても、肺高血圧がとれない状態、不可逆的変化となります。この状態をアイゼンメンゲル症候群と呼びます。従って、厳密に言えば、アイゼンメンゲル症候群で、自然に肺血管抵抗がさがり、肺高血圧が無くなることはありません。普通は、年齢とともに徐々に進行して行きます。しかし、アイゼンメンゲル症候群になりかかっていて、その状態が長く続くことは考えられます。
10歳でのカテーテル検査での血管抵抗値が、10-12単位ということのようです。その後、長い時間が経過していて、肺動脈拡張が有り、ばち指があり、喀血も認めるという点は、アイゼンメンゲル症候群の経過として不思議ではありません。心エコーにおいて、肺動脈の拡張がまったくない、右室壁の肥大化もない、左室が圧迫されひしゃげる様子もない、ということですが、総合病院での肺血管の拡張がある、という結果と相違がありますね(これは、どの検査に基づく所見か不明ですが)。
心臓カテーテルについての考え方は、まったくおっしゃるとおりです。肺高血圧の患者さんのカテーテルの主な適応は、アイゼンメンゲル症候群となっているかどうか、肺血管抵抗を下げる薬剤がいくつか用いられるようになりつつありますので、その有効性を判定することだと思います。アイゼンメンゲル症候群での肺動脈拡張、右室壁の肥厚などは、カテーテルでなくとも、CT, MRI検査などでも判定可能です。他の先生に、診察を受け、検査所見をみてもらい、セカンドオピニオンを求めることも大切かと思います。
文責:丹羽 公一郎