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肺動脈狭窄と妊娠

ご質問

31歳 女性

6歳時に心室中隔欠損症で手術をし、欠損孔はふさがっていますが、心雑音が残っています。3年前から年1度の定期健診を受診し、右心室の圧が高い(単位は分かりませんが270、右心房から右心室の圧力の差は27~33と言われています。)ことと、肺動脈弁狭窄との診断を受けました。今回の検査でも数値は変化していません。この度妊娠し、16週で心臓の定期健診を受診した際、右心室の圧が高く、妊娠後期の右心室への負担や出産直後の血液量の変化に対応できるかを考え、中絶を勧められました。中絶はしたくない旨を述べたところ、カテーテル検査をしてみて肺動脈の圧力が高ければ中絶しか方法はないとの診断を受けたのですが、中絶しか方法はないのでしょうか?



お答え

先天性心疾患の手術後ではあるけれども、何らかの遺残病変が残っている場合(今回の様に、心室中隔欠損は治っているけれども肺動脈狭窄を残している場合など)は、その遺残病変の程度により妊娠出産の危険度が決まってきます。また、一般的にどのような心疾患の場合に妊娠を中断ないしは非常に注意深く妊娠継続を行うかといいますと(妊娠を継続することにより母体に大きな危険を伴う場合です)、一般的に、肺高血圧、心不全、大動脈拡張、高度のチアノーゼ、左室(ないし右室)流出路狭窄、これらの病気が高度(或いは中等度)の場合です(軽度の場合は大きな問題にはなりません)。
今回おたずねの場合は、右室流出路狭窄に当たります。妊娠後期には、体を循環する血液量が妊娠前の30%程度増加します。このため、流出路が狭い病気(中等度から高度の場合、軽度の場合は大きな問題にはなりません)では、増加した循環血液量が、流出路を通りにくくなり、心不全を起こす場合があります。高度狭窄の場合、理想的には、妊娠前に治療しておくことです。今回の場合は、狭窄の程度が、軽度から中等度のようです(実際、診ていないので十分ではありませんが)。しかし、すでに妊娠している場合は、継続するか、中絶するか、妊娠中に治療するかという選択になります。また、狭窄部によって、妊娠中のカテーテル治療が可能な場合もあります(この場合は、胎児への影響なども考え、25週くらいの時期に行います)。手術的な治療も報告されています。
軽度から中等度であって、肺高血圧(肺動脈の圧が高い場合)がない場合は、継続可能なことが多いですが、肺高血圧が中等度以上~高度の場合は、妊娠継続による母体の死亡率が高いので、中絶が奨められます。
妊娠を継続するかどうかは、母親の心臓の状態だけではなく、今後妊娠する可能性があるかどうか等社会的状況、母親が、出産後すぐにこどもを養育できない場合もあり、周囲の理解があること、胎児の状態などを総合して判断することになります。今回の情報だけでは、十分な判断は出来ません。一般的なことを述べましたが、主治医の先生とよく話しあって、決められることが必要です。
文責:丹羽 公一郎