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ファロー四徴症の再手術

ご質問

57歳 男性

当方57歳の男性会社員です。50歳の時にそれまでのデスクワーク中心の仕事から工場現場の仕事に転職して現在に至っております。40年前(17歳)にファロー四徴症の根治手術を受け(T病院)、直後に心室中核欠損部からの僅かな?モレが確認されたため、過激な運動を避けて日常生活を送ってまいりました。術後20数年間は数年に 1 回の定期検診を受けておりましたが、特に異状もなく、その後は病院からの連絡もありませんでしたので検診を受けておりませんでした。
43歳頃から年10数回ほどの登山を始めました(きっかけは不眠症から来る不整脈対策でした。対象の山は初級~中級、登頂所要時間は標準の約20%増)。2 年前の 6 月、かなりキツイ山を登っている最中、急に心臓の動きが弱くなり、15分間ほど失神しました。横になり、1 時間後に回復しましたが、以後登山は中止しました。その年の 8 月、勤務先で昼休み終了後に急に不整脈?に襲われ、回復に約 2 時間ほど要しました。翌日、地元病院の循環器内科を受診(心エコー、ホルター)しましたが、特に異状はないとのことでした。その翌年(去年)の 4 月、会社の終業間際に急に息が苦しくなり、30分ほど横になっても回復せず、顔色が非常に悪い、ということで救急車で病院に運ばれました。その時の自覚症状は、心臓部分が少し重苦しく、動悸があり、不整脈(期外収縮)も通常より多く、寒気があり、深い呼吸が必要でした。しかし、救急車内での血圧、脈、血中酸素濃度は正常であり、さらにその時の心電図もさほど異状はない、とのことでした。病院に到着後、約30分(計約 2 時間)で回復しましたが、回復と同時に大量の尿が出ました。病院では原因不明と診断され、当日の内に帰宅しました。しかし、後日も数回同様の騒ぎがあり、5 月にN市のT病院に検査入院(10日間)しました。
検査内容は、ホルター、心エコー、心MRI、CT、RIシンチ、トレッドミル等です。判明した結果は、中核欠損部からのモレは 2 箇所あるが、量はさほど多くはない。肺動脈の狭窄は修復されているが、肺動脈弁で狭窄がみられる。心筋梗塞の兆候はなく、又、肺は全くの正常であり、運動能力もファロー四徴症の手術を受けた者にしてはかなりある。又、悪性の不整脈も見られない。しかし、「息苦しい」症状の直接的な原因は不明である。おそらく老化に伴い、心臓の筋肉が柔軟性を失ったためだろうと推測される、というものでした。
しかし、その後も度々症状が続き、10月にN病院で両心カテーテル検査を受けました。その結果、右心室の内圧が通常の1.8倍あること、また、肺動脈弁の狭窄があるため、結果的に肺機能が正常に保持されていることが判明しました。しかし、「息苦しい」症状の直接的な原因はやはり不明のままでした。そして、症状の改善には効果が薄いかも知れないが、将来予測される更なる心臓機能の悪化(右心室不全)を予防するためには心室中核欠損の再手術しかなく、もし希望するのであれば、そろそろ検討するタイミングである、と言われました。 その後、地元病院を紹介され現在に至っています。月 1 回の通院で、薬は 1 日に、レニベース錠 5、リスミー錠 1mg各 1 錠を服用しています。又、同時期に仕事内容をデスクワーク中心に変更してもらい、その後は著しい症状は出ていません(不整脈の数も、工場現場に居たときは約4600回、デスクワーク中心になってからは3200回/24h、に減少しました)。しかし、睡眠や休息が不足の日は、午後には疲れが出やすく、又、夕食後に不意に動悸が始まり、30分位横になることも度々あります。風呂も長風呂は危険です。しかし、体調のよい休日には、立ち読み可の本屋に出かけて、1時間30分間位店内に居続けることも可能です(※医師の中には、症状の原因はかなり精神的なものだ、という意見もありました)。
長々と経過説明を致しましたが、最近再手術を決心致しました。お手数ではありますが以下の 6 点につき、質問致します。
  1. 通常の1.8倍ある右心室の内圧は手術直後からあったのではなく、長年の右心室への負荷で(右心室の筋肉運動の結果)徐々に高まってきた可能性はないでしょうか。
  2. 再手術では肺動脈弁の狭窄もその対象になるでしょうか。
  3. 私のような場合の再手術の危険度は 5 段階評価ではどのくらいになるでしょうか。
  4. 再手術後に不整脈(特に悪性の)が現状よりも増える可能性はあるでしょうか。
  5. 再手術を受けるためにはどのような病院を選択すべきでしょうか。
  6. RI angio:QP/QS≒2.0 とはどういう内容なのでしょうか。
以上、大変恐縮ではありますが宜しくお願い申し上げます。



お答え

ファロー四徴症のいわゆる根治手術後の長期遠隔期の問題、特に、再手術のご質問で、これからも多くの患者さんがもたれるであろう重要なことと思います。ファロー四徴症のいわゆる根治手術後の長期遠隔期(術後20年以上経過した場合)の再手術は、日本の多施設検討では、5 %程度に認められています。術後40年50年経過すればもっと増える可能性はあります。再手術の理由は、肺動脈狭窄残存、肺動脈弁閉鎖不全、心室中隔欠損残存、大動脈弁閉鎖不全等が主なものです。これらの程度により、再手術の適応が決まります。さらに、突然死に結びつく可能性のある不整(心室頻拍、心房細動など、特に室頻拍を伴う場合)を伴う場合は再手術を行うことが多くなります。再手術は、これらの異常を修復すると同時に、肺動脈弁の異常の程度が大きければ治すことになります。また、同時に不整脈に対しても、手術的に治すことがしばしばおこなわれています。

さて、ご質問ですが、
  1. 通常の1.8倍ある右心室の内圧は手術直後からあったのではなく、長年の右心室への負荷で(右心室の筋肉運動の結果)徐々に高まってきた可能性はないでしょうか。
    手術後早期のデータがわからないので、正確には判断出来ません。しかし、徐々に進行してきた可能性は、あると思います。
  2. 再手術では肺動脈弁の狭窄もその対象になるでしょうか。
    右心室の血圧が、通常の1.8倍程度であるならば(あまり高い値ではありません)、カテーテル検査の時の造影検査による右心室の出口の形、肺動脈弁逆流の程度により、再手術の対象となるか決めることになります。
  3. 私のような場合の再手術の危険度は 5 段階評価ではどのくらいになるでしょうか。
    再手術は手術時間がかなり長くなりますが、先天性心疾患の手術を比較的多く行っている施設ですと、再手術死亡率は、5パーセント以下と考えられます。しかし、こどもと異なり、呼吸機能、腎機能、冠動脈異常の合併の有無など、全身的な状態の評価もこれに影響を与えます。
  4. 再手術後に不整脈(特に悪性の)が現状よりも増える可能性はあるでしょうか。
    不整脈は、心臓に負担がかかっている状態で起こりやすいので、再手術をすれば(心臓の負担が減るはずなので)、起こりにくくなることが一般的です。特に、不整脈手術も同時に行った場合は、減少します。しかし、術直後は、手術の影響などが残るため、一時的に不整脈が増えることがあります。
  5. 再手術を受けるためにはどのような病院を選択すべきでしょうか。
    先天性心疾患を多く手がけている病院で、成人期の手術にも経験がある。そして、小児科(或いは循環器科)にも、成人先天性心疾患に習熟した医師がいることです。もちろん、麻酔科も大切です。
  6. RI angio:QP/QS≒2.0 とはどういう内容なのでしょうか。
    肺体血流量比が、2.0ということで、肺に流れる血液量が多いということを示します。これだけから判断すれば、心室中隔欠損の残存が小さくは無いと考えられます。詳しくは、主治医にお聞きください。
以上の検査、年齢、環境などを総合して、再手術を決めてゆきます。分からない点など納得のいくまで、主治医にお尋ねください。また、どの病院が良いかも、尋ねてみると良いと思います。
文責:丹羽 公一郎