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心房中隔欠損症の手術法

ご質問

24歳 男性

先日心房中隔欠損を診断されました。手術を考えていますが、病院によっては手術方法が違うようですね。

今現段階で、もっとも術後のダメージが少ない手術方法にはどんなものがありますか?またスポーツをやっているのですが、復帰までどのくらいの期間がかかりますか?また入院期間なども知りたいです。ぜひ教えてください。



お答え

御指摘のように心房中隔欠損症(ASD)に対して各病院によって異なる手術方法を採っている場合があります.

人工心肺装置が補助手段として必要な事は同じですが心臓への到達方法に相違があります. 一般的なASDの手術では胸骨(胸郭正面の固い骨)を真ん中で全切開し,人工心肺 を心臓に装着し,体外循環を開始します.心臓を完全に停止させるか或いは電気的心 室細動という状態にして右心房を開け,欠損孔を閉鎖します.

欠損孔の閉鎖には直接 中隔壁を寄せて閉じる直接閉鎖法と,大きな欠損孔の場合は人工膜あるいは自己心膜 のパッチを使用して閉じるパッチ閉鎖法があります.

美容的な意味から小児期の手術や,若い女性の場合は正中の傷を避けるため右側方開胸によるアプローチをとる場合もあります.これは右乳房の下から肩甲骨の先端く らいまでの手術創で行なうものです.ただし部分肺静脈還流異常症(ASDの4%くらい に合併するといわれています)というような合併症を伴っている場合は手術が困難になります.

最近,低侵襲心臓手術(MICS)という考え方が提唱されるようになりました.これは胸骨を全部切開しないで小さい傷で手術をしようというものです.胸骨を全切開しなければ術後の創部の安定が早まり,早い社会復帰が可能になります.美容的な見地か らも有用だと言えます.その中でも内視鏡支援下に行なうPort-accessという方法は 非常に小さな傷で手術をおこなう事ができます.しかし特殊な道具やテクニックを必 要とし,一部の施設でしか行なわれていません.またいろいろな部位からカテーテル や体外循環用の管を挿入する事になり一般的な方法に比べ時間もかかるようです.

また輸血が必要かどうかということも一つの問題です.近年,人工心肺や技術の発達によって小児期でも無輸血心臓手術が出来るようになってきました.輸血によって 起こる副作用や感染症の可能性は皆無ではありませんので,無輸血手術に向けた努力 が各施設で行なわれています.しかし合併症の有無や年令,体重,術前状態によっては輸血したほうが術後の経過がよくなる場合もあります.主治医の説明を良くお聞きになる事が必要です.

術後入院期間は特に合併症がなければ一般的には10日から2週間です.2~3ヶ月で骨も癒合もしっかりしてきますから少しづつ運動のトレーニングを開始できるで しょう.手術時期が遅くなるほど術後不整脈の心配が出てきますが,24才くらいですとその心配は少ないと思います.
文責:松尾 浩三