第 4 回成人先天性心疾患研究会 抄録

1. 成人期のファロー四徴修復術前の体肺側副血管(APCA)に対するコイル塞栓術
国立循環器病センター小児科1,同放射線診療部2,同心臓血管外科3
矢崎  諭1,塚野 真也1,藤田 秀樹1,富田  英1,山田  修1,小野 安生1
越後 茂之1,木村 晃二2,八木原俊克3
 成人期チアノーゼ型心疾患の症例においては、小児期の症例以上にAPCAが問題となることが多い。修復術前のAPCAの評価、処理時の留意点等につき、典型例の経験をもとに考察した。
【症例】28歳男性、ファロー四徴、肺動脈閉鎖、非交通性肺動脈の両側シャント術後。反復する喀血を契機に心疾患の修復を希望。Qp/Qs=1.1,PA index=315,LVEDV=217ml(144%N)で修復可能と判断されたが、両肺に大量のAPCAの潅流を認めた。術前に肋間動脈、内胸動脈、側胸動脈などからのAPCAを133個のコイルを使用して塞栓した。透視時間は224分、手技時間は11時間3分であった。SaO2は前82.9%から後75.5%に低下した。喀血は塞栓後は軽快した。
【考察】チアノーゼ型心疾患術前には、体外循環を成立させ術野への血液還流を少なくする、術後の体心室の容量負荷を軽減する、術後の出血を予防するなどの目的でAPCAの処理は必須される。特に成人期においては大量の APCAが存在することが多く、開胸を伴う姑息術後ではさらに多いことを意識して丹念に造影し、塞栓する際はAPCAのネットワーク形成を念頭において実施することが肝要であると考えられた。

2. 成人におけるコイル塞栓術
東京女子医大循環器小児科1,愛媛大学小児科2
石井 徹子1,中西 敏雄1,篠原 徳子1,中澤  誠1,檜垣 高志2
【目的】成人動脈管に対し行ったコイル閉塞術の特徴を考察する。
【対象】 1995年から2000年までにコイル塞栓術を行った101例中、20歳以上の成人例5例。5例に対し6回の手技を施行。
【方法】 動脈管コイル閉塞術の成功例と非成功例で動脈管径、肺体血流比、使用コイルを比較し、その特徴を小児と比較した。またコイル塞栓術中に起こった問題を小児例と比較し、その特徴を考察した。
【結果】 5例中3例でコイル塞栓術が可能であった。1例では2回施行し2回とも成功しなかった。成功率は50%で小児例より成績が悪かった。また成功例の動脈管は3.1mm以下で非成功例は6.0mmを超えるものであった。また成功例の肺体血流比が 1.5以下であったのに対し非成功例は1.8以上であった。以上の結果は動脈管径が3mm以上、肺体血流比1.5以上では、それ以下のものと比べ閉塞困難となる率が高いという小児の傾向とほぼ同様の結果であった。問題点として溶血を2例(2回)認めた。小児例では溶血の合併症はなく、溶血は成人の特徴と思われた。コイルの落下や突出による回収はなかった。
【考察】 動脈管径が3mm以上、肺体血流比1.5以上では、それ以下のものと比べ閉塞困難となる率が高い。また成人では溶血が起こりやすい可能性がある。

3. 喀血を伴う体肺側副血行路に対するコイル閉鎖術
聖マリア病院小児科1,久留米大学小児科2
姫野和家子1,赤木 禎治2,水元 淑恵2,山川 留美2,松石豊次郎2
【背景】根治手術不能とされた重症先天性心疾患の成人期合併症の一つである喀血は、重篤で進行性の場合が多くしばしば致死的となる。外科的治療は困難であり確立された治療法はない。
【目的】体肺側副血行路からの肺出血を来したチアノーゼ性先天性心疾患成人女性に対し、catheterコイル閉鎖術を行い良好な経過が得られたため報告する。
【症例】44歳女性。生後6ヶ月時に主要体肺側副血行路を伴う肺動脈閉鎖兼心室中隔欠損症と診断されたが、根治手術不能例として内科的に管理されていた。22歳時に上行大動脈右肺動脈短絡術を施行。他院にてフォロー中の42歳頃より喀血を繰り返すようになり、徐々に程度や頻度が進行したため、喀血の評価目的で紹介となった。大動脈造影にて右肺へ向かう複数の発達した体肺側副血行路とその末梢に動静脈瘻が認められ、これらの血管が喀血の原因と考えられた。IDC-18 coilおよびPDA用detachable coilを用い塞栓術を行ない、喀血の原因と考えられる主な2本の側副血行路を完全閉鎖した。動脈血酸素飽和度は77%から75%へと軽度低下した。一過性の発熱以外に合併症は認められなかった。コイル閉鎖術後に胸写上の血管陰影は消失し、術後経過も良好であった。
【結論】成人期チアノーゼ性先天性心疾患に合併する再発性の側副血行路からの肺出血は、コイル閉鎖術により低侵襲に治療することが可能と思われる。

4. Mustard手術後の心房粗動の診断と治療にElectro-anatomical mappingが有用であった1例
岩手医科大学第二内科1,同小児科2,オクラホマ大学3
籏  義仁1,堀田 一彦1,川上 朋子1,伊藤 明一1,平盛 勝彦1,小山耕太郎2
高橋  信2,佐藤 陽子2,千田 勝一2,中川  博3
 複雑な解剖を有する心房内血流転換術後の心房頻拍に対してElectro-anatomical mapping(CARTO)を用いてリエントリー回路の同定と根治術を試みた。
【症例】28歳女性。3歳時に心室中隔欠損と肺動脈狭窄を合併した完全大血管転位に対して、Mustard手術と心室中隔欠損閉鎖術および肺動脈拡張術を施行した。23歳時に洞不全症候群のため永久ペースメーカ植込みを行った。平成11年5月から動悸を自覚するようになり、心電図では右脚ブロックを伴う136/minの頻拍がみられたが抗不整脈薬多剤抵抗性であった。CARTOにより両心房のマッピングを静脈側と動脈側とから行った。心房興奮時間は頻拍周期(440msec)に一致していた。頻拍は肺静脈心房の高側壁に始まり、肺静脈心房後壁をまわりbaffleを越えて体静脈心房に達し、中隔をはさみ僧房弁輪から三尖弁輪を時計方向に旋回し肺静脈心房後側壁に戻るマクロリエントリ性心房頻拍と判明した.Baffleをはさみ三尖弁─下大静脈間に線状アブレーションを行い頻拍は停止した。Voltage mapでは両心房に広範囲な低電位部が存在していた。
【まとめ】CARTOを用いることで、複雑な解剖を有するMustard手術後心房頻拍の診断と治療が可能であった。手術侵襲による広範な低電位と術後の解剖学的構造異常が、心房頻拍の基盤になっていると考えられた。 (厚生労働省循環器病研究委託費(12 公-11)による研究成果)

5. 成人先天性心疾患におけるアミオダロン療法の有害事象について
東京女子医科大学日本心臓血圧研究所循環器小児科
稲井  慶,篠原 徳子,相羽  純,中澤  誠
【目的】成人先天性心疾患におけるアミオダロン療法の有害事象について調査し、危険因子の検討を行う。 対象と方法)16歳以上の先天性心疾患患者で3ヶ月以上アミオダロンを内服した患者19例(年齢17-44歳、男15例、女4例)について後方視的にまとめる。
【結果】(1)間質性肺炎の発症はなかったが、2例でDLcoの低下を認め、アミオダロンが中止された。2例とも三尖弁閉鎖症のフォンタン術後であった。(2)5例(26%)に甲状腺機能異常を認めた。機能低下3例、単純性甲状腺腫2例で、thyrotoxicosisの症例はなかった。2例(10%)で薬物治療を行っており、断薬を要した症例はなかった。(3)5例(26%)で角膜に軽度のアミオダロン沈着を認めたが、治療や断薬に至った例はなかった。(4)いずれの事象でも明らかな危険因子は検出されなかった。
【結論】成人先天性心疾患に対するアミオダロン療法では、甲状腺機能異常が最も高頻度に発生していた。間質性肺炎の発症はないが、拡散能が低下する症例があり、肺病変についても慎重なフォローが必要と思われた。今回の検討では明らかな危険因子は検出できなかった。

6. 冠静脈洞型心房中隔欠損症の1治験成人例
愛媛県立中央病院心臓血管外科
三浦  崇,富野 哲夫,佐藤 晴瑞,北條 禎久,長嶋 光樹,大谷 享史,岡本 佳樹
【はじめに】冠静脈洞型心房中隔欠損症はunroofed coronary sinus syndromeの一型で、非常に稀な疾患(心房中隔欠損症ASDの1%以下)である。今回、私たちは冠静脈洞型心房中隔欠損症の一成人例を経験したので報告する。
【症例】52歳、女性。小学生時から度々心雑音を指摘。大学生時にはASDと診断されたが、症状ないため放置。2000年8月の検診で胸部写真上、心拡大と肺野のうっ血を指摘され、近医受診。心エコーでASD(2次孔欠損型)と診断され、手術適応あるため当科紹介受診となった。
【検査所見】心エコーでは TR II度、MR I度を認め、ASDは20-25mmの大きさで2次孔欠損型であり、PAPVC、LSVCは認めなかった。心臓カテーテル検査では肺動脈圧47/19(30)mmHg、Rp1.8U・m2、Qp/Qs4.3、L→R shunt 73%であった。
【手術】右房を切開してみると卵円窩はintactで通常冠静脈洞(Coronary Sinus:CS)が開口する部位に40×20mmの欠損口を認めた。CSは左房に存在し、Unroofed CSの形態であった。三尖弁と僧帽弁間には心房中隔が存在したため、心内膜欠損症ではなく、冠静脈洞型ASDと診断し、CSは左房に落とす形で房室結節の損傷に注意して欠損口閉鎖を施行した。三尖弁はKay法で32mmに縫縮した。
【術後経過】胸部写真上、CTR(48%)と肺野のうっ血は改善。心電図上、ブロックなどは認めなかった。心エコーでも閉鎖部位のleak、TR、MRは認めず、経過順調で術後18日目に退院となった。

7. 飛行機搭乗によりシャント閉塞をきたした右室低形成,肺動脈狭窄,心房中隔欠損,
短絡手術後の34歳女性の1例
天理よろず相談所病院小児循環器科
松村 正彦,須田 憲治
 2歳で初めて心雑音とチアノーゼに気づかれた。他院で手術不能として経過観察され、チアノーゼと易疲労性はあるものの成長はほぼ正常であった。15歳の時に当院初診。心カテにて右室低形成、肺動脈狭窄、心房中隔欠損と診断され、A-Pシャント手術を受けた。高校卒業後事務職に就いていたが、次第にチアノーゼと易疲労性が増悪し、21歳の時に再度A-Pシャント手術を受けた。その後結婚しアスピリン内服を継続し SpO2は80%前後であった。
今回インドネシアのバリ島への飛行機旅行は3回目で、水分補給や適度な運動を心がけエコノミークラス症候群にも気をつけていたが、天候が悪く現地着陸に手間取り3回上空で旋回あり、約1時間シートベルト着用を強いられた。旅行中から労作時呼吸困難あり、下肢の浮腫や顔色不良に気づかれた。 帰国後すぐ入院時の SpO2は60%でシャント音は聴取せず、心カテにてシャントの血栓閉塞を認めた。t-PAによる血栓溶解術とバルーン拡大術を試みたが不成功で、人工血管8mmGore-texを用いA-P シャント手術を施行し、SpO2は85%に改善した。右室容積は正常の52%で、PA-indexは140mm2/M2であった。チアノーゼ型心疾患患者ではフライトのトラブルで血栓形成や循環動態の増悪につながる可能性があり、注意が必要である。

8. 高度肺血管病変を伴った成人心房中隔欠損症の3手術例
日本医科大学第二外科1,公立刈田綜合病院循環器科2
大森 裕也1,山内 仁紫1,坂本俊一郎1,石井 庸介1,八巻 重雄2,田中 茂夫1
 手術適応のborderlineと思われる高度肺高血圧を伴った成人心房中隔欠損症3例に対し、根治手術に先立ち肺生検を施行し、病理組織学的所見および術後遠隔期予後を検討した。
症例 1. 57歳男性:PAP 75/35,RpI 7,Pp/Ps 0.75,Qp/QS 1.4 
症例 2. 27歳女性:PAP 79/33,RpI 12,Pp/Ps 0.76,Qp/Qs 1.26
症例 3. 35歳女性:PAP 110/31,RpI 8,Pp/Ps 0.92,Qp/Qs 1.3
 肺生検の結果は、症例1.2では縦走平滑筋細胞と弾性繊維の増殖からなるいわゆるmusculoelastosisとplexogenic arteriopathyのmixed typeで,それぞれ肺動脈の70%、75%の閉塞を認めた。症例3ではmusculoelastosisを認め、肺動脈の70%が閉塞していた。手術は全例胸骨正中切開、人工心肺使用下に行った。全例において人工心肺離脱直後からNO吸入(20ppm)を行い、術後はPGI2(4ng/kg/min)の持続静注を行った。術後経過は良好で全例術当日に人工呼吸器より離脱、ICU滞在は2日程度で、術後2週間で退院となった。また肺高血圧の軽減を目的とし退院後はPGI2(120µg)経口投与を行った。術後肺動脈圧は、症例1:45/20 症例2:60/26 症例3:65/35 と3症例とも肺動脈圧は低下し、NYHA1度へ改善した。
【結語】70%以上の肺小動脈の閉塞を認める心房中隔欠損症でも術後遠隔期の肺動脈圧の低下が期待できる。

9. 社会的自立を成しえた高齢先天性心疾患の検討
東京慈恵会医科大学心臓外科
野村 耕司,森田紀代造,川田 典靖,木ノ内勝士
 社会的自立を成し得た高齢先天性心疾患の3症例を経験したので報告する。
 1症例目は31歳女性。診断はd-TGA2型。1歳6ヶ月時にBlalock-Hanlon手術+PA banding施行された。以降大きな弊害なく成長したが、次第に労作時呼吸困難が増強したため24歳時に当科受診、NYHA III°であった。心カテーテル検査の結果、左室は体心室とほぼ等圧で、肺動脈弁機能も温存されていたため、25歳時Jatene手術を施行した。術後のカテーテルでは約40%程度の肺高血圧が残存するものの、現在full-time workに従事している。
 2例目は38歳女性。診断はDILV,PS,Complete AV block。昭和46年4月(7歳時)に世界で初の長期生存例となったVentricular septationを施行、AV blockに対して同時にペースメーカー植え込み術を行った。平成7年(31歳時)脳梗塞を患い左片麻痺となるもリハビリテーションにより独歩可能となった。翌平成8年ASD,PSに対してASD closure+RVOTRを施行し現在full-time workに従事している。
 3例目は29歳女性。TOF,PA,MAPCA。1歳時、7歳時にそれぞれ左BT,右BTを施行した後、順調に成長。労作時呼吸困難が次第に進行し平成5年(19歳時)に左Uniforcalizationおよび左肺生検施行。生検の結果、心内修復可能と判明、20歳時に心内修復術を施行した。術後のPA圧は30/15mmHgであり、その後結婚され25歳時に妊娠。26歳時に中等度妊娠 中毒症のため帝王切開にて無事出産を終えた。
 今回、高齢先天性心疾患患者に対して1例は小児期に、他の2例は成人期に根治手術を 施行し、いずれも社会的自立を成し得た症例を経験した。

10. 成人期先天性心疾患患者の社会的自立の現況
千葉県循環器病センター,千葉大学教育学部千葉県循環器病センター
丹羽公一郎,立野  滋,建部 俊介,藤田佳奈子,杉田 克生
【目的】成人先天性心疾患(CHD)患者の社会的自立の現状を明らかにするためのアンケート調査を行った。
【方法】対象は種々のCHD115名(平均年齢29.5歳、修復手術後72名、男52名、女63名、非修復チアノーゼ疾患13名)であった。結果を、総務省日本統計年鑑と比較した。
【結果】NYHA I-II:108名、投薬中:53名、心臓病による入院歴:59(51%)、最終学歴(高卒以上):99(86% vs 94%)、就業(あり/なし):72/16(82% vs 80%)、運転免許:76(66%)。身障者認定:35(30%)、健康保険(本人/扶養):66/49(57%)。生命保険(加入/非加入):54/45(51% vs 61%)、既婚:36(31% vs 32%)、生産児あり:25(22% vs 14%)。チアノーゼ疾患での、最終学歴、就業率、生命保険加入率、既婚率はそれぞれ69%、40、18%、15%であった。
【結論】成人CHD患者は、日本人一般と比べ既婚率、就業率は同等だが、就学率、生命保険加入率はやや低く、やや消極的な思考傾向が見られた。チアノーゼ疾患は、これらは明らかに低率であった。社会的自立を妨げる因子は、疾患重症度、就学率低値、消極的思考傾向、患者の生涯歴の調査が不十分なことがあげられる。この結果を、患者、医療従事者、一般社会が共有する必要があると考えられた。

11. 社会的自立を妨げる要因:男女による違い
久留米大学小児科
赤木 禎治,赤木 禎治,水元 淑恵,山川 留美,加藤 裕久,松石豊次郎
 成人に達した先天性心疾患患者の社会的自立について当院成人先天性心疾患外来で経過観察中の患者より検討を行った。同年齢群で比較すると女性の結婚比率が有意に高かった。男性患者は心疾患が軽度であっても、結婚に困難を感じている場合が多かった。同様の心疾患の重症度であっても、女性患者は結婚に関して積極的であり,妊娠・出産に関する希望も高かった。チアノーゼが残存する心疾患であっても結婚、妊娠・出産には積極的であり、社会活動に関して前向きに取り組む姿勢がうかがわれた。また、人工弁置換術後、Fontan術後といった妊娠・出産に関するリスクが高いと考えられる状況であっても、その可能性について強い要望と期待をもっていた。一方、男性患者の場合は家庭の主としての責任の面も含め、結婚に関する責任を強く感じており、経済的バックグランドの弱さを含め社会的自立は可能なものの、家庭としての独立には大きな障害を負っているものと考えられた。これらの特徴は疾患の重症度とは必ずしも相関せず、心疾患そのものは軽症であっても深刻な問題となっている場合も多い。今後、これらの患者がより高齢化していったときの社会全体での支援体制の確立が急務であると思われた。

12. 社会的自立の現状と問題点:自立を妨げる要因
~医療サイドの自立を妨げる要因~
国立小児病院循環器科1,同心臓外科二科2
百々 秀心1,石沢  瞭1,清水 信隆1,池本 博行1,関口 昭彦2,近田 正英2,戸成 邦彦2
【背景】我々は妊娠可能年齢の患者に、心疾患の管理、避妊、中絶、細菌性心内膜炎、遺伝、胎児エコー検査を説明している。しかし、医療側の不確実な知識や指導が、患者の社会的自立を妨げるケースもある。
【目的】妊娠出産という観点から、患者の社会的自立の援助をするための方法を検討する。
【症例】症例1は28才。ファロー四徴症の根治術後。25才時に第1子を出産。27才時に再妊娠。地方の心臓外科医よりファローの術後であるという理由で妊娠不可と言われ、中絶。外来検査にて、妊娠可能と判断。症例2は27才。心室中隔欠損。妊娠出産を希望し、循環器内科を受診。心室中隔欠損は自然閉鎖しており、肺高血圧はなしと診断。カテーテル検査が必要と言われる。外来検査で心室中隔欠損、肺高血圧の所見なし。
【結語】先天性心疾患の患者の医療側の知識、認識は不十分である。患者が十分自立するために、医療サイドの正確な知識が必要である。

13. チアノーゼ性心疾患根治術後の社会生活状況
兵庫県立尼崎病院心臓センター小児部
坂崎 尚徳,鈴木 嗣敏,槇野征一郎
【対象と方法】現在18歳以上のチアノ−ゼ性心疾患根治術後症例194例(男127例)を対象としretrospectiveに手術歴、心機能、不整脈、社会生活について調べた。また、就業に関与する危険因子をt検定、Fisher検定で検討した。現在年齢は18〜43歳(平均26歳)、根治術時年齢は0〜16歳(平均4歳)、診断は TOF 153,dTGA 25,cTGA 9,TA 4,SV 2,Truncus 1例であった。ダウン症が5例、22q11.2欠失症候群が7例含まれていた。術式は、右室流出路形成術142,Mustard手術21,Rastelli手術17,Fontan型手術9,DKS手術2例等であった。再手術症例は37例で、9例が成人期に行われた。
【結果】心機能分類では、NYHA1が173例、NYHA2が21例、心胸郭比は平均53%(41-83%)で、上室性頻拍が14例、心室頻拍が4例、ペースメーカ例が5例であった。社会生活では、就業者124、作業所4、学生15、主婦9、無職(パートを含む)42例であった。就業者群(A)124例とDown症を除く無職群(B)38例とを比較した所、BTshunt既往例の比率がA群12%,B群26%、NYHA2例の比率がA群6%,B群24%、強心剤内服例の比率がA群13%,B群35%、CTRの平均がA群52%,B群56%で有意差を認めた。一方、上室性頻拍,心室性不整脈例の比率や術前の酸素飽和度,ヘマトクリット値に差はなかった。無職の原因としては、知的障害、神経症、対人関係問題が約2割を占め、22q11.2欠失症候群もほぼ全例含まれた。

14. 成人先天性心疾患患者の自立と社会不安に対するアンケート調査 倉敷中央病院小児科
倉敷中央病院小児科
吉村真一郎,脇  研自,新垣 義夫,馬場  清
 成人先天性心疾患(ACHD)患者の自立には、本人の認識と社会の受容が大きな問題となる。当院に通院する20歳以上のACHD患者62名に対し、自己の疾患に対する認識、自立状況、社会生活への不安に関する意識調査を行った。
  回答は28名(45%)で、女性は18名。疾患内訳はTOF 9名、VSD 7名、Mustard術後 2名、DORV 2名(うち1名Fontan術後)、MVP後 1名、MVR後 1名、TA Fontan術後 1名などであった。 自己の疾患認識では85%が正確に疾患名を答え、また、85%が中学以前に疾患について理解していたと答えた。治療については 40%が現在も内服継続中であった。
 79%が医師からの直接の説明を受けていた。
 自立状況については、一人で通院しているのは68%、一人暮しは43%が経験していた。50%に「自立している」との意識があった。
 就職などの社会生活では36%が現状に不安を感じ、全例とも就職あるいは日常で不利益を経験していた。 個別の意見としては、VSDやCOAの術後患者の健常者と同等の扱いを求める意見がある一方、Mustard術後やMVP術後患者の障害者枠で入社した人には残業や休日出勤の免除を求める意見、また、残業できないことによる低収入を自立できない要因に上げる意見などがあった。
 今後手術成績の向上により、ACHD患者が増加することは明らかであり、その自立をすすめ、不安を減らすことは、今後の課題となる。

15. Grown-Up Congenital Heart Disease (GUCH) Patients: 真のGrown-Up とは?
〜GUCH specialist の立場から〜
東京女子医科大学日本心臓血圧研究所循環器小児科
篠原 徳子,相羽  純,中澤  誠
 GUCH patients の中で、その心的成長過程で何らかの問題を持ち越したり、後に神経精神学的障害をきたして自立が妨げられているグループが注目されている。我々の GUCH special unit における2200入院(1991-2001)のうち、神経精神面で問題があった32例につき検討した。年齢14-61歳(m=29)、30歳代が最も多く(34%)、男:女20:12、死亡5(自殺0)であった。精神遅滞(37%)の他には、ひきこもりやPTSDを含む重症ストレス反応および適応障害が多く(28%)、神経症性障害(16%)、精神分裂病(13%)、躁鬱病(3%)、痴呆(3%)であった。神経症は平均年齢43歳と他グループよりも高齢であった。基礎心疾患はファロー四徴症が多く(32%)、このうちCAFSは4例であった。重症ストレス反応および適応障害で既往手術回数が3~5回と多い反面、神経症性障害は0〜2回と少ない傾向がみられた。心的問題の管理・加療状況については、53%が何らかの精神医療サービスを受けていた。特に重症心不全兼躁鬱病の管理は非常に難しく、神経精神科との連携が重要であった。家族の理解のみならずリエゾン、心療内科、神経精神科、精神面に重点をおいた訪問看護サービス等との協力体制整備が必要であり、さらにはchildhoodの心的ケアに役立てることが期待される。

16. 左肺動脈欠損を合併したファロー四徴症心内修復術後に長期追跡が可能であった一例
新潟大学大学院医歯学総合研究科呼吸循環外科分野
渡辺 弘,高橋 昌,羽賀 学,登坂有子,林 純一
 一側肺動脈欠損は比較的まれな先天性心疾患で、ファロー四徴症との合併が報告されている。ファロー四徴症の心内修復術においては肺血管床の発育が重要であり、一側肺動脈欠損を合併する場合は、手術および遠隔成績に問題を有する可能性が大きい。われわれは術後26年に渡り追跡が可能であった一例を経験したので報告する。
 症例は37歳、男性。3歳時にブロック手術を施行し、11歳時にtransannular patchによる心内修復術を行った。左肺動脈は存在せず、再建できなかった。術後の心臓カテーテル検査では、肺動脈圧は60/10と肺高血圧を認めた。術後は通常の社会生活が可能であった。術後8年時の心臓カテーテル検査では肺動脈圧は45/0(19)と低下していた。イソプロテレノール負荷では右室圧は60/0から75/0へと軽度の上昇が認められた。術後26年時の心臓カテーテル検査では肺動脈圧は19/0(7)と肺動脈圧は正常値であった。イソプロテレノール負荷により右室圧50/0→80/0、肺動脈圧29/9(16)→23/0(9)と推移した。
 一側肺動脈欠損を合併したファロー四徴症術後の遠隔期に肺動脈圧は低下しており、運動負荷に対応できる状態であった。

17. ファロー四徴症心内修復術後例の長期遠隔期の罹病率とQOL−多施設共同研究報告−
TOF術後国内研究グループ
丹羽公一郎,中澤  誠,寺井  勝,浜田 洋通,安倍十三夫,杉本  智,渡辺  弘,
龍野 勝彦,高本 真一,太田 真弓,石澤  瞭,加藤木利行,森  克彦,康井 制洋,
川平 洋一,赤木 禎治,加藤 裕久,安井 久喬,原口 菜穂 
【目的】日本国内多施設共同研究によりファロー四徴症(TOF)心内修復手術後の遠隔期生命予後を明らかにし、遠隔期予後規定因子の解析を行う事を目的とした。
【方法】手術方法、手術補助手段の違いが大きいとされる1972年ならびに1982年のTOF心内修復術施行例のうち、共同演者の属する12施設の術後生存退院例302例(1972年 121例(A群)、1982年 181例(B群)を対象とした。患者属性,手術歴,生命予後について診療録から後方視的に調査を行なった。さらに、患者属性,手術歴のこれに与える影響を解析した。
【結果】1982年は1972年と比べ全身、心血管系合併症の増加、手術時年齢の低年齢化、手術方法の変化を認めるが、遠隔期死亡率、再手術率に差は認めなかった。1972年、1982年の術後遠隔期死亡率はそれぞれ、95.9%,98.3%(14年)、94.2%(25年)、再手術例は4.1%、5.0%で、両者に差を認めなかった。生命予後規定因子は、手術年齢、再手術の既往、遺残VSDで、1972年単独では、transannual patch例、1982年は、心外導管使用例が加わった。結論:1972年、1982年のTOF修復手術後生存退院例の術後遠隔期死亡率は良好で再手術例は少なく、満足のできる手術成績と考えられた。

18. 高齢者心房中隔欠損症の術後遠隔成績
札幌医科大学第二外科
佐藤 真司,森川 雅之,岡田 祐二,山田  陽,伊藤 寿朗,安倍十三夫
 1970年から2001年11月まで当科で経験したASD手術症例581例のうち60歳以上の高齢者12例(I群)の術後遠隔成績を、50~59歳の40例(II群)と比較検討を行った。平均年齢、男/女比、術後経過観察期間はI群64±3歳、7/5,6.5±5.9年、II群55±3歳、11/29、9.1±5.3年であった。術前状態としてNYHA、Af、PAP(mmHg)、Qp/QsはI群で1.8±0.6、6例(50%)、40.4±12.5、3.0±0.8、II群2.0±0.8、9例(22.5%)、34.1±10.1、2.9±1.1といずれも有意差は認めないがAfの頻度とPAPはI群で高い傾向にあった。術後両群においてNYHAの改善に差は無いが、術後遠隔期にも洞調律を維持した症例はI群4/6例(67%)、II群30/31例(97%)とI群で有意に(p<0.05)低く、早期の手術介入が望ましいと思われた。

19. 成人期(20歳以上)におけるVSD(心室中隔欠損症)手術症例の検討
札幌医科大学第二外科
岡田 祐二,佐藤 真司,森川 雅之,安倍十三夫
 成人期(20歳以上)に入ってからVSD根治手術を行った症例に対して比較検討を行った。
【対象】本教室にて1981年より2000年までの期間にVSD閉鎖術を行った20歳以上の症例は18例であり、男女比は1:1、平均年齢37.6(20〜61)歳であった。肺高血圧(Pp/Ps>0.6)合併症例は3例で、術前NYHA分類は I度が3名、II度12名、III度2名、IV度1名であった。合併疾患は、右室二腔症が3例、大動脈閉鎖不全5例(うちバルサルバ洞破裂が3例)、感染性心内膜炎が3例認められた。術後にやや難渋した例があったものの手術死亡例はなく、Follow up期間(平均11.8年、range:5年〜19.25年)の間、心事故や遠隔死亡は0件であり、術後のQp/Qsの有意な低下が認められ、Pp/Psは肺動脈高血圧症を伴わない症例ではほとんど変化はなかったが、肺高血圧症を合併した症例では優位に低下し、正常範囲に復した。またほとんどの症例にてNYHA I度で、元気に社会に復している。術前慎重に手術適応を決定する必要があるが、肺高血圧を合併する症例を含め、学童期を過ぎたVSDに対しても、外科治療後の良好な予後が得られることが示唆された。

20. 60歳以上の高齢者先天性心疾患手術症例の検討
埼玉医科大学心臓血管外科・呼吸器外科1,同小児心臓科2
朝野 晴彦1,許  俊鋭1,桝岡  歩1,尾崎 公彦1,谷津 尚吾1,山火 秀明1
横手 祐二1,小林 俊樹2,小林  順2,先崎 秀明2,増谷  聡2,星  礼一2
 様々な理由で放置され、高齢になってから手術を受ける先天性心疾患症例が現在も散見される。当然、原疾患からくる合併心疾患を抱え、さらに高齢からくる臓器障害を合併しており、手術リスクも高く、術後の管理、生活にも支障を与えている。今回、当科で施行された60歳以上の手術例を検討した。
【症例及び方法】1983年から2000年までに、18歳以上の先天心手術患者312例中、43例(13.5%)が60歳以上であった。疾患はASD単独8例、ASD+弁疾患の合併21例、ASD+PAPVR1例、再手術ASD1例、Incomp.AVSD2例、PS1例、BWG synd.1例、バルサルバ洞動脈瘤破裂1例、PDA+MR1例、特にASDに虚血性心疾患を合併しCABGを同時に施行した例が6例であった。以上の症例の手術成績を検討した。また、手術時期が60歳を越えた理由に関して検討した。
【結果】手術死亡2例(4.7%)でASD+TAP+MAPの例で肺高血圧高度の例であった。手術遅延の理由は、病気を知らず症状が出て(診察は受けていた)16例、初めて手術適応と知らされて6例、手術拒否6例、知っていたが放置10例、費用の問題2例であった。
【結語】ASD例の多くは弁形成手術を同時に必要としたが、その多くは診断の不確かさと患者の病状理解不足から起こっており、以前に手術を受けるチャンスがあったと考えられた。

21. 先天性心疾患患者における周産期不整脈の多施設共同研究
先天性心疾患患者術後遠隔期不整脈研究班
立野  滋,丹羽公一郎,越後 茂之,小山耕太郎,角  秀秋,篠原 徳子,柴田 利満,
長嶋 正實,中村 好秀,福嶌 教偉,横田 道夫,中澤  誠 
 近年、先天性心疾患患者(CHD)の妊娠出産例が増加している。周産期には不整脈が増加すると予想されるが、いまだその実態は把握されていない。そこで、CHDを対象に周産期に治療あるいは厳重な監視を要した不整脈例について全国アンケートによる1次調査を行なった。ついで、該当例につき詳細な調査を実施した(2次調査)。全国100 1528施設に1次調査を依頼し340施設から回答が得られた。1991年から10年間の総出産数は1,022,052件で、CHD患者の出産数は2328件(0.23%)、さらに厳重な監視を要したか治療の対象になった不整脈例は161件(6.9%)であった。母体死亡例はなく、流産死産が17例に認められた。2次調査により23例、25出産が報告され、基礎心疾患はファロー四徴6例、心室中隔欠損7例、多脾症3例、他7例であった。6例で抗不整脈薬が使用され、その不整脈診断は心房細動2例、心房粗動1例、心房頻拍1例、WPW症候群に伴う房室回帰頻拍1例、上室性頻拍1例であった。また洞不全症候群2例、完全房室ブロック3例に妊娠前よりペースメーカー治療か行われていた。CHD患者では、周産期に問題となる不整脈の発生は予想より少なかったが、治療を要する上室性頻拍例が認められた。

22. 成人先天性心臓病患者における妊娠出産に関する患者教育と問題点
久留米大学小児科
水元 淑恵,赤木 禎治,山川 留美,菅原 洋子,家村 素史,前野 泰樹,石井 正浩,
加藤 裕久,松石豊次郎
 成人期に達した先天性心疾患患者数は増加し続け、妊娠・出産にいたった女性患者も増加している。これらの患者が安全に妊娠出産を迎えるためには、医療サイドの管理と同様に患者教育が重要になる。妊娠前の患者教育をするに当たって、可能な限りの循環動態評価を実施し、まず妊娠出産が可能なのか、避けるべきなのかを判断し、何れのケースにも、妊娠した場合の母体・胎児のリスクを説明する。また、妊娠した際には心機能評価をし、管理方法を決定するために必ず循環器外来を受診するよう教育を行う。妊娠不可例には避妊方法の教育が非常に重要で、当院ではバリア法を推奨しているが全国レベルではどの方法がどのくらい用いられているのか不明である。妊娠不可例には患者本人だけでなく、配偶者(婚約者)への教育も必要であるが、子供を産めないことが結婚生活(結婚前であれば結婚自体)に影響する場合もあるため、説明方法には十分注意を払う必要がある。医師の無知による妊娠不可の判断は患者の人生を大きく左右することにもなり決してあってはならない。また、近年中・高生での妊娠もあり得るため、早期からの患者教育が必要であると思われる。現在でも妊娠・出産の管理基準が定められていない心疾患は多数存在しており、今後も多施設間での症例検討を含めて管理基準の作成を進める必要がある。また避妊法に関しても意見が分かれるところであり、全国レベルでの調査が必要と思われる。

23. 青年期チアノーゼ性心疾患児における血管内皮機能の検討
雪の聖母会聖マリア病院小児循環器科1,同心臓血管外科2, 久留米大学小児科3
古井  潤1,石井 正浩3,棚成 嘉文1,藤堂 景茂2
【背景】先天性心疾患に対する心臓外科手術の進歩した現在においても、心疾患に対する根治術の適応が無くチアノーゼが残存した状態で日常生活を過ごして症例は本院においても少なからず存在している。チアノーゼが残存した症例では思春期からヘマトクリット上昇に伴う過粘稠度症候群による頭痛、腹痛などの不定愁訴を訴え、さらに成人期に達すると合併症として高尿酸血症、脳梗塞、消化管・気道からの出血などが出現しする。これらの症状は日常生活を著しく妨げており、チアノーゼ性心疾患患者の長期予後は決して芳しいものでなく加齢とともに症状が悪化しゆき、対処療法のみで経過観察しているのが現状である。
【目的】青年期チアノーゼ性心疾患児における血管内皮機能の評価を行い、ビタミン(Vit.C)が血管内皮機能に与える効果を検討した。対象は12例のチアノーゼ性心疾患児(17.0±1.4歳、男:女6:6)と年齢と性別を一致させた対照群12例とした。血管内皮機能は内皮依存性の血管拡張能であるFlowーmediated dilatation(FMD)により評価した。
【結果】1)2群間のFMDの比較はチアノーゼ群の有意な低下を示した(3.3±4% vs. 9.1±6%、p<0.05)。 2)チアノーゼ群と対照群におけるニトログリセリン(0.6mg)舌下投与により両群共に良好な血管拡張を示した。3)Vit.C投与によりFMDは両群共に改善した(12±5% vs 15±9%,p<0.05)。
【結語】青年期チアノーゼ性心疾患児における血管内皮機能低下が認められ、抗酸化作用を持つVit.C投与は血管内皮機能を改善することが示唆された。

24. 結婚・就職に至った大血管転換,Eisenmenger症候群の1男性例
東京慈恵会医科大学小児科
藤原 優子,寺野 和宏,布山 裕一,衛藤 義勝
 28才男性。2ヶ月時、顔色不良のため本院受診。完全大血管転換(2型)と診断。9ヶ月時より心雑音聴取せず、心臓カテーテル検査の結果、肺血管抵抗係数10単位、肺動脈圧120/60mmHg,大動脈圧120/86mmHgで手術適応なしとし、外来経過観察を行った。小学校入学時には15分程度の歩行は可能な状態、7歳時、身体障害者第1級取得。小学校3年ごろより登校が困難となり、中学2年より、病弱児養護学校に入学。普通高校、理科系大学・大学院に進学した。17才時、病状について告知を行った。21才よりberaprost sodium経口投与を開始。大学院より一人住まい、24才で結婚。現在、NYHA Class II.外資系医療機器販売会社のデスクワークに内定した。身体障害者枠での採用、外資系企業のため海外出張の可否、妻の勤務の関係で単身赴任、通勤の難点より会社敷地内の社宅の検討、業務内容は通常業務ではあるが残業可否の問題、外来受診による有給休暇の使用などが問題点となった。
思春期の病状の告知は有用であった。就職に当たってはいまだ多くの問題がのこされている。

25. 心内修復術未施行のチアノーゼ性先天性心疾患における心筋シンチグラフィー
筑波大学小児科1,同放射線科2
稲村 聖子1,堀米 仁志1,武田  徹2,高橋 実穂1,塩野 淳子1,松井  陽1
【目的】心内修復術未施行のチアノーゼ性先天性心疾患では長期の低酸素血症、多血の影響などが加わり、徐々に心機能低下が出現する。本病態における心筋血流、脂肪酸代謝の半定量的な評価をおこなった。
【対象】10歳〜22歳(中央値18歳)のチアノーゼ性先天性心疾患6例(TOF 1例、SV 2例、TA 1例、TGA 2例)
【方法】TlおよびBMIPPシンチグラムを約1~2週の間隔で施行した。得られた2核種のSPECT像でそれぞれ短軸3断面(心尖部、中央部、心基部)において各々4区域(前壁、中隔、下壁、側壁)(計12,右室を含めると21区域)にROIを設定しその1ピクセルあたりのTL、BMIPPそれぞれの平均カウントを求めた。更に2核種の比較のため平均カウントの高かった側壁又は中隔を基準にしたパーセンテイジを求めその比を検討した。
【結果】血流の低下に比較して脂肪酸代謝障害が強く認められる領域が存在した。高度の心不全を呈したTOFの22歳の症例では、心不全症状出現時と治療開始1年後(ジゴキシン、利尿剤、カルベジロール)の評価を行った。心拡大は縮小し、臨床症状は改善したが、心筋シンチグラム所見では明らかな効果は認められなかった。

26. 先天性心疾患における腎の病理組織学的変化
東京女子医科大学附属日本心臓血圧研究所循環器小児科
佐々木章人,冨田 幸子,中澤  誠
 チアノーゼを伴う先天性心疾患には後年、cyanotic nephropathyが合併することがあり、組織学的に特異な変化、すなわち糸球体毛細血管の拡張、メサンギウム領域での細胞及びマトリックスの増生、及び糸球体の硝子化を認めることが報告されているが、その発症機序は解明されていない。今回、我々はチアノーゼ性心疾患症例の中で、後年、蛋白尿の出現、あるいは腎機能低下が臨床経過に影響を及ぼしたと考えられる10例の剖検例の腎臓標本について病理組織学的、及び免疫組織学的な検討を行った。年齢は13才から36才で、方法は、腎ホルマリン標本を脱パラフィン化し、Vascular Endothlial Growth Factor(VEGF)、Platelet Derived Growth Factor(PDGF)、Transforming Growth Factor-β(TGF-β)による酵素抗体法で検討したものである。その結果、糸球体メサンギウム領域での細胞及びマトリックスの増生、及び糸球体の硝子化が強い症例では、VEGF/VEGFReceptorー1が強く染色され、PDGF、TGF-βは染色されなかった。このことから、cyanotic nephropathyの発症、特に組織増殖性の変化にはVEGF/VEGF Receptor-1が大きく関与していることが示唆される。